概要
RSU(制限付き株式付与:Restricted Stock Units)を自分で確定申告する方法について、2021年2023年の確定申告を行った経験からまとめます。
追記:2023年の確定申告が終わったので少し訂正やアップデートを行いました。
- 概要
- RSU(制限付き株式付与:Restricted Stock Units)の確定申告の要否判定
- RSUのイベントについて理解する
- e-Taxで申請する前の事前準備
- RSUの課税対象となる「給与所得」の計算方法
- E*TradeでのRSU給与所得計算に使う数字の取得方法
- RSUの課税対象となる「配当所得」の計算方法
- RSUで得た株式を売却した際に得た利益「株式等の譲渡所得等」の計算方法
- まとめ
RSU(制限付き株式付与:Restricted Stock Units)の確定申告の要否判定
- 確定申告年中(1月1日~12月31日)に権利付与(Grant)のみ発生し、権利確定(Vest)がない場合は、確定申告は不要。
- RSUで得た株は、一般の株式と同じように「配当所得」も「譲渡所得(売ったときの利益)」も確定申告の対象。
RSUのイベントについて理解する
RSUの仕組み上、権利を付与された段階では、付与された株はまだ自分のものではありません。そのため、確定申告の対象期間中(1月1日~12月31日)に権利確定がない場合は、確定申告は不要です。権利が付与された後、権利確定(Vest)というイベントが発生しますが、そのタイミングで初めて株が自分のものとなり、もらった株の時価額を「給与所得」として申告が必要になります。
また、株式を保持している期間についても(まだ売却してなくても)、配当がでますので、その配当金についても「配当所得」として確定申告が必要です。
最終的に、株を売却した際に得た利益についても「株式等の譲渡所得等」として確定申告が必要です。
e-Taxで申請する前の事前準備
確定申告の書類作成は以下のページで詳しく説明しています。
その前にRSUの申告で必要な、「RSU権利確定時の時価額」、「RSUで得た株式の配当所得」、「RSUで得た株式の売却益」の数字を計算しておくとスムーズです。次のセクションで方法を記載します。
RSUの課税対象となる「給与所得」の計算方法
計算式
RSUの権利確定(Vest)がされ株が自分のものになった場合、その株の時価額を「給与所得」として扱います。その「給与所得」の計算方法は以下の通りです。
「a. 権利確定した日の株価」 ×
「b. 確定した株数」 ×
「c. 権利確定した日のTTM」
= 「給与所得」
a. 権利確定した日の株価
「権利確定した日の株価」の調べ方は株式 - Yahoo!ファイナンスなどで、ご自分の会社を検索し、「時系列」のセクションから該当日をたどると特定できます。
b. 確定した株数
「確定した株数」は、RSUを貰っているE*Tradeなどの証券取引仲介業社のサイトで調べられます。下記に詳しく調べ方を記載します。
c. 権利確定した日のTTM
USドル建てなどで受け取った場合は、日本円に換算が必要です。日本円に換算するためにはTTMという為替のレートを使います。110などの数になります。
権利確定した日のTTMを調べるには、バックナンバー 2020年 | みずほ銀行のサイトが便利です。その他三菱UFJでも探せます。
E*TradeでのRSU給与所得計算に使う数字の取得方法
もしRSUをE*Tradeでもらっている場合は、以下の方法で「給与所得」を計算するための各数字が簡単に取得できます。
E*Tradeへログインし、「ポートフォリオ」をクリックし、ご自分の持ち株制度画面へ遷移します。
「保有株式」の画面に遷移しますので、そこから「制限付株式(RS)」のセクションへスクロールします。付与日毎に記載された列から、明細を開きます。
すると、権利確定日単位での明細が表示されます。
この画面から、RSUの権利確定時に計上する給与所得を計算するための数式で使用する、以下の数字を得ることができます。
- 「a. 権利確定した日の株価」:予想原価基準(1株単位)
- 「b. 確定した株数」:売却可能数量
後は上記で記載した方法で「c. 権利確定した日のTTM」を得れば、「給与所得」を計算することができます。
注意: もしすでに売却済みの場合は「売却可能数量」は0になっています。その場合は「権利確定のスケジュール」をクリックすると権利確定した株数を見つけることができます。
RSUの「給与所得」計算用Googleスプレッドシート
RSU権利確定時の時価額の計算はそれほど複雑ではありませんが、自分用に作成したGoogleスプレッドシートがあるため、共有します。
読み取り専用となっているため、ご自分のGoogleドライブへコピー、またはExcelとしてダウンロードして利用してみてください。
黄色太枠で記載している適宜更新すると自動的に計算されます。計算式も簡単であるためご確認してみていただくと、どのように計算するのかが分かり理解が進むと思います。
RSUの課税対象となる「配当所得」の計算方法
RSUの権利確定を経て、晴れて株が自分のものになった場合、売却までの期間に得た配当金は「配当所得」として課税対象となり、確定申告が必要です。
ここではE*Tradeで年間の配当金をどのように調べるかについて記します。
なお、この配当金は、RSUで得た株式とESPPで得た株式は合算されています。そのため、RSUとESPPそれぞれで配当金を探す必要はありません。
E*Tradeへログインしで「ポートフォリオ」をクリックし、ご自分の持ち株制度画面へ遷移します。
次に、税金情報 > 取引明細書 と進んでください。
すると「Account Records: Statements」の画面になるため、確定申告期間最後の「Account Statement」を探して開きます。(ダウンロードしておいた方が良いかもしれません。)
開いた「Account Statement」の「Dividends Received Taxable」行、「YEAR TO DATE」の数字が配当金で、それが「配当所得」として計上する数字です。
RSUで得た株式を売却した際に得た利益「株式等の譲渡所得等」の計算方法
RSUで得た株式は、通常の株式と同様に、売却益を「株式等の譲渡所得等」として確定申告が必要です。加えて、USドルなどで持っているものであるため、円へ変換しないといけない手間があります。
また、確定申告対象期間より前(2021年の確定申告であれば2020年1月1日より前)にRSU権利確定があった株式の売却であったり、RSUが年中に複数回あったものを売却したりと、様々なシナリオがあるため計算は結構複雑です。
計算式
「a. 譲渡による収入金額」 -「b. 取得費(取得価額)」= 「RSUとESPPで得た株式の売却益」
a. 譲渡による収入金額
この譲渡価格を計算するのは難しくありません。以下の計算式で求められます。
「譲渡による収入金額」= 「売却した日の株価」 × 「売却した株数」 × 「売却した日のTTM」
例によってE*Tradeで売却の履歴の探し方を記します。
E*Tradeへログインし、「ポートフォリオ」をクリックし、ご自分の持ち株制度画面へ遷移します。
次に、「口座」メニューから「損益」をクリックします。
損益画面から、納税年度が確定申告対象の年になっていることを確認し、「ダウンロード」ボタンより「ダウンロードを展開済み」を選択します。すると「G&L_Expanded.xlsx」というファイルがダウンロードされます。
このExcelファイルには、上記で示した「a. 譲渡による収入金額」を計算する数字がそのまま含まれています。というかドル建ての「a. 譲渡による収入金額」の数字自身が載っています。
- 「売却した日の株価」:「売却額(1 株単位)」列
- 「売却した株数」:「数量」列
- 「譲渡による収入金額」:「総売却益」列
これに加えて「売却した日のTTM」として、「売却日」におけるTTMを以下のサイトから確認して取得することで、円建ての「a. 譲渡による収入金額」が計算できます。
b. 取得費(取得価額)
「取得費(取得価額)」は、RSUの場合は権利確定時に付与された株の時価となります。1回のRSU権利確定で得た株を売却するのであれば、計算は簡単なのですが、複数回に渡り得た株を売却する際、売却した株式の取得時価格は、それらの平均値を計算する必要があり大変面倒です。
ただ、E*Tradeの上記のExcelのデータを使えば、どのタイミングで得た株式を売却したかのかという情報が分かりますし、それぞれのタイミングの取得時価格と数量はそろっているため、それほど大変ではありません。
「取得費(取得価額)」= 「権利確定した日の株価」 × 「売却した株数」 × 「権利確定した日のTTM」
- 「権利確定した日の株価」:「空売り調整後原価基準(1 株単位)」列
- 「売却した株数」:「数量」列
これに加えて「権利確定した日のTTM」として、「取得日」におけるTTMを以下のサイトから確認して取得することで、円建ての「b. 取得費(取得価額)」が計算できます。
※「手数料」については正直E*Tradeでどのように見るのかわかりませんでした。「G&L_Expanded.xlsx」には織り込まれているのかなと思いますので、RSUやESPPで得た株式の売却益の計算では無視しても大丈夫だと思います。
売却益のまとめと計算用Googleスプレッドシート
上記で計算方法を記載しましたが、売却益が最も煩雑です。以下に、ダミーデータで作成した売却益の計算シートを共有します。
読み取り専用となっているため、ご自分のGoogleドライブへコピー、またはExcelとしてダウンロードして利用してみてください。
太枠で記載している箇所を「G&L_Expanded.xlsx」よりペーストすると自動的に計算されます。計算式も簡単であるためご確認してみていただくと、どのように計算するのかが分かり理解が進むと思います。
まとめ
以上がRSUについての確定申告をするにあたり必要となる数字の準備になります。まとめると以下の数字を計算しました。
- もらった株の時価額を「給与所得」
- 株式保持中の「配当所得」
- 株を売却した際に得た「株式等の譲渡所得等」
RSU以外にも確定申告が必要である場合は、別途詳しく記載しているので、是非ご参照ください。
全ての確定申告に必要な数字の準備ができている方は、下記の「確定申告書作成コーナー」による確定申告書作成についてもまとめましたので、是非以下のページをご参照ください。